COLUMN 歴史・文化

「芸どころ名古屋」を育てた、名古屋の芸能文化

2021.04.01

尾張名古屋の芸事は徳川宗春から
昔から芸事が盛んといわれる名古屋。「小さい頃にピアノと絵画を習っていた」「習字は今もずっと続けている」など、倹約気質といわれながら習い事にはお金を惜しまない、という人が多いのもひとつの特徴といえるでしょう。
名古屋の芸事文化は、尾張藩七代藩主である徳川宗春から始まったといわれています。
徳川宗春は名古屋市内に遊郭や芝居小屋を建てたりするなど、娯楽を奨励。当時の将軍、徳川吉宗が提唱した「質素倹約」とは裏腹に、祭り事や芸能を促進しました。芸に関する規制緩和も行ったおかげで江戸から芸人や役者も集まり、市民の間にも芸能が根付いていきました。
時の政治や枠にとらわれない宗春のその姿に「かぶき者藩主」という名前もついたほどです。

日本舞踊五大流派、西川流家元の「名古屋をどり」
江戸時代から続く伝統芸能はいくつかありますが、そのうちのひとつが名古屋の「西川流家元」です。1841年(天保12)に初代家元の初世西川鯉三郎が初代家元として踊りの礎を作り、二世鯉三郎の時代には終戦間もない1945年(昭和20)「名古屋をどり」が行われます。またひとつのドラマとして楽しめる「舞踊劇」も「名古屋をどり」から始まりました。歌舞伎舞踊や民話舞踊などを取り入れた作品や、タップダンスとのコラボなど、誰もが楽しめる名古屋をどりはまさに名古屋を代表する芸能のひとつです。

日本の漫才のルーツ?!尾張万歳
万歳とは、お正月に各家を訪問して今年一年の家内安全や健康を祈る芸能のこと。鎌倉時代から行われている「尾張万歳」も、名古屋を代表する伝統芸能のひとつです。実は万歳には「尾張万歳」と「三河万歳」がありますが、三河万歳より尾張万歳のほうが賑やかで庶民的な芸能といわれます。江戸時代には徳川家康の御加護のもとに三河万歳が保護されましたが、時代が変遷するにつれて賑やかで楽しい尾張万歳のほうが発展していったといわれています。
最初は祝詞を唱える太夫と合いの手を入れる才蔵の2人で演じるものでしたが、明治時代の三曲万歳や、謎掛け問答などを行う音曲万歳など、現在では人数や役柄、演目も多種多様。昨今の漫才ブームで活躍する上方漫才は、この尾張万歳がルーツです。日本のお笑いは、ここから生まれたといっても過言ではないでしょう。テンポの良い掛け合いと楽しい動きは老若男女の笑いを誘います。

才蔵が使う小道具

太夫が使う小道具

「都々逸」の発祥も名古屋?!
都々逸とは、七七七五を定形とした短い詩のこと。江戸末期、熱田区神戸に住んでいた鯛屋お仲が新流行歌として歌ったのが都々逸の発祥では?といわれています。当時、宮宿で女中を務めていたお仲はその頃流行っていた潮来節に節を似せて歌詞を新たにした神戸節を歌い、それが都々逸に変遷していったようです。その後上方から流行歌の「よしこの」が伝わり、これにお仲が節をつけて歌ったとか。その美声に、その場にいた人々はみな感嘆したといい伝えられています。

茶道文化も盛んな名古屋 芸どころと同じく、名古屋は茶道が盛んな地としても知られています。その始まりは尾張徳川家の初代藩主、徳川義直からと伝えられます。義直は、名古屋城の外御深井に窯を作って器を焼かせ、公家や大名らに「御茶道」を浸透させました。十二代藩主の徳川斉荘もさらに茶道を発展させていきました。

肝心のお茶は、名古屋の老舗茶舗「升半茶店」が尾張藩から許可を受け、宇治の抹茶を名古屋へ広めました。現在も松尾流など名古屋の茶道文化を牽引する多くの流派がこちらの抹茶を使用しています。石臼で挽いた抹茶は香り高くふくよかな味わいです。

老舗の御菓子所「両口屋是清」は、1671年(寛文11)から尾張藩御用の菓子司として歴史を今に受け継いでいます。栄店には、徳川家へ菓子を届けるのに使われた贅沢な通筥(かよいばこ)が飾られています。

踊りや都々逸、茶道などさまざまな芸事が発展し、今日まで脈々と伝えられる名古屋の芸能文化。歴史を紐解けばこんなに奥深く、これまで芸事に関わったことがない人でも興味を持てるようになるかもしれませんね。

もっと、ポイント

俳人・松尾芭蕉とも縁が深い名古屋。芭蕉は1684年(亨保元年)、名古屋に初めて立ち寄り、現在のテレビ塔下の傘や久兵衛社宅で「冬の日」の歌仙を巻きました。ここが蕉風発祥の地となり、“蕉風発祥之碑”が建てられています。その後も芭蕉は名古屋市内を行脚し、鳴海などあちこちに句碑が残っています。芭蕉が死去した際には、その死を悼んでともに句を詠んだ仲間らが緑区鳴海町の誓願寺に芭蕉供養碑を設立。全国を旅し、各地で歌仙らとともに句を詠んだ松尾芭蕉は名古屋を愛し、往時の名古屋の俳人たちからも愛されていたようです。

出典
https://www.nishikawa-ryu.com/nishikawaryu.html
https://www.city.chita.lg.jp/citypromotion/story/
文化財叢書51巻「都々逸発祥の地」
ペンプラス2018年発行(自身が執筆したページ)
名古屋市文化財調査報告書「芭蕉発祥の地」

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