COLUMN 歴史・文化

小説の舞台を巡って、名古屋の魅力を再発見しよう!
『さよならドビュッシー』編

2021.03.24

■意外と多い!? 名古屋を舞台にした小説
名古屋市図書館がまとめた「小説で読む名古屋」というサイトを見ると、物語の中に名古屋が登場する作品は実に300以上もあります。
「意外」と言ったら失礼かもしれませんが、名古屋を舞台にした作品が実に多くあることがわかりました。
「小説で読む名古屋」では、取り上げた作品の簡単な内容を紹介しているほか、3段階で「名古屋度」を示しているので、読んでみたいという人は参考にするとよいでしょう。
今回はその中から1作品をピックアップ。
ただ取り上げても面白くないので、作品に出てくる舞台を巡る“コンテンツ・ツーリズム”という形で紹介します。
https://www.library.city.nagoya.jp/img/reference/nagoyanovel.pdf

数ある作品の中から選んだのは、『さよならドビュッシー』(中山七里著、宝島社刊)。2009年に「第8回このミステリーがすごい大賞」を受賞、2013年には映画化もされたミステリー小説の傑作です。
主人公はピアニストを目指す女子高生の香月遥。ある日、自宅で火災が発生し、資産家の祖父・玄太郎と従姉妹の片桐ルシアが命を落としてしまいます。なんとか一命をとりとめたものの、遥は全身大やけどを負うことに。やけどの影響で体が思うように動かない中、ピアニストを目指す遥は、新進気鋭のピアニスト・岬洋介の指導を受け、コンクールを目指します。そんな遥の周囲では次々と不吉な事件が起こり、ついには殺人事件が…。
ストーリーはざっとこんな感じです。とくに読み応えがあるのは、ピアノの演奏シーン。美しい旋律と弾き手の心情が叙情的に描き上げられ、つい引き込まれてしまうほどです。ところどころで名古屋の地名や建物名が出てくるのも、うれしい点。実際に小説に出てくるところを訪ね、その様子をイメージしながら読むと、より面白さが増すのではないでしょうか。

■万場大橋は穴場のビュースポット!?
「しばらくすると前方に万場大橋が見えてきた。欄干にもたれて見下ろす庄内川の風景は水面の乱反射が眩しく煌いて素敵なのだが、ルシアが横にいるのなら話は別だ。」

物語で最初に出てくる名古屋の地名は「万場大橋」。名古屋から津島方面へと抜ける県道115号線上を走る全長300mほどの大きな橋です。
遥が幼少期から通っていたピアノ教室が近くにあるという設定で、ルシアと一緒に歩くシーンとして描かれています。
川の両岸にある中村区・中川区に住んでいる人はよく知っているかもしれませんが、名古屋でもあまりメジャーとは言えない、知る人ぞ知るスポット。
とは言え、作中にもあるように、晴れた日の眺めはなかなかのもの。どこまでも広がっていく空と日光でキラキラと輝く川面の青、川に沿って続く堤の緑、遠くに見える建物の白のコントラストが絶妙です。
また、西の空がオレンジ色に染まる夕景、夜の闇にライトアップされた名駅高層ビル群が浮かび上がるように見える夜景もオススメ。
一度、足を運んでみる価値のあるスポットだと言えます。

■本山で発見! 全長15mの名古屋大仏
「広小路通りも本山を過ぎると道の両端に緑が多くなってくるので、荒薙神社に立つ大鳥居に朱色が殊更に映える。」

遥の自宅は、広小路通り「本山」交差点の南東にある、住宅街の中の高台に建っているという設定。広大な敷地には本宅と離れがあるお屋敷なのだそう。
「ここが遥の自宅かもしれない」などと想像力をかき立てながら歩いてみるのも一興です。
大きな通り(広小路通り、山手四谷通り)沿いにはおしゃれなカフェやショップがあり、付近の大学に通う学生らの人出でにぎわっていますが、一本奥に入ると、途端に閑静な住宅街へと表情を変えるのが面白いところ。
ちなみに、作中に出てくる荒薙神社は架空のものなので、残念ながら朱色の大鳥居を見ることはできません。その代わり、全長15mもある大きな大仏様(名古屋大仏)に出会えるので、探してみてはいかがでしょうか。

万場大橋から本山まで、バスと地下鉄を乗り継いで約1時間。「遥がピアノのレッスンに通うのは、さぞかし大変だったのでは」などと、いらぬ心配をしてしまいました。
こうして登場人物の気持ちになれるのも、“コンテンツ・ツーリズム”の面白さのひとつだと言えるでしょう。

また、さまざまな設定でも楽しめるのがこの作品の面白さ。ちなみに、遥の父が勤めているのは東山銀行と二和銀行が合併してできたメガバンクで、遥の通う学校は旭丘西高校と言います。名古屋に住む人なら何をモチーフにしているのか、もうお分かりのはずですね。
このほか、栄の愛知県芸術劇場や伏見にある白川公園、しらかわホールなど、なじみの深いスポットも随所に登場します。
本を読んで、舞台を巡れば、きっと物語の面白さは倍増するはず。ぜひ、本を片手に出掛けてみてはいかがでしょう。

最後にひと言

『さよならドビュッシー』は2013年、女優の橋本愛さんとピアニストの清塚信也さんのW主演で映画化もされています。この映画には、「なごや・ロケーション・ナビ」も協力。オアシス21や庄内川、ゆとりーとライン、東山給水塔、日本特殊陶業市民会館など、名古屋の各地で行われた撮影を支援しました。実は名古屋市役所もあるシーンで使用されています。小説と併せて、映画のロケ地巡りも楽しんでみてください。

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