COLUMN まちづくり、ものづくり

欧州姉妹都市ランス・トリノの歴史・まちづくりと名古屋
景観保存の方法と活用

2019.05.27

 名古屋市が現在、ロサンゼルス市、メキシコ市、南京市、シドニー市、そしてトリノ市およびランス市と姉妹友好都市提携を結んでいることをご存知でしょうか?姉妹友好都市交流は、文化・教育・スポーツ・経済など様々な分野で人と人とが触れ合う交流を進めることにより、人種や国境を越え、国際交流拠点都市・名古屋を創造することを目的としています。
 3月下旬、名古屋都市センターでランス市やトリノ市の歴史やまちづくりから、名古屋のまちづくりについて歴史をどう活かしていくのか考える名古屋市歴史まちづくりシンポジウムが開催されました。会場には60名ほどの方が集まり、名古屋市の調査報告や三重大学大学院工学科 准教授 浅野聡氏の講演をはじめ、建築家の市原正人氏、NPO法人まちづくり役場理事の伊藤光男氏、株式会社創建取締役副社長の川合史朗氏による事例紹介やパネルディスカッションが行われました。

 フランスにあるランス市は、人口約18万人のシャンパーニュ地方最大級の都市。フランス国王が戴冠式を行ったノートルダム聖堂、トウ宮殿、サン=レミ聖堂など、3つのユネスコ世界遺産を抱え多くの観光客が訪れます。ランス市はバイオエコノミーやハイテク産業にも力を入れるとともに、歴史的建造物や町並が新しいものに壊されないよう1913年に制定された「歴史的建造物に関する法律」をきっかけに保全に努めています。
ランス市は名古屋市と同様に大規模な戦災を経験していますが、多様な歴史資産が残されており、中でもノートルダム大聖堂の20年余りに及ぶ修復・再建はランス復興の象徴となっています。建物だけでなく、眺望景観への保全も積極的に取り組んでいるのが印象的で、指定された歴史的建造物の周辺500m以内はあらゆる建物を規制。調和された町並みとなるように配慮されています。

 イタリアの首都ローマの北西約600kmにあるトリノ市。自動車産業が盛んで、フィアットの企業城下町として発展しました。歴史的な計画都市である一方、19世紀以降は工業化が進み、この中で閉鎖された工場や関連施設など負の遺産を抱えることになるトリノ市。この負の遺産を都市再生のための有用な資源として捉えたまちづくりが印象的でした。フィアットの拠点工場をショッピングモールや劇場、大学、ホテル、美術館など複合的な施設にコンバージョンしたり、工場跡地を大規模な公園に整備したりと、現代に活用されています。
 名古屋にも、ランス市やトリノ市と同じく積み重ね、語り継がれている歴史は多いものの、市街地整備の過程で失われた景観も少なくありません。歴史的建造物の保存活用や法律整備は、ランス市やトリノ市の魅力的な景観につながっており、この姉妹都市に学び、名古屋市における歴史まちづくりへの取組とつなげる参考事例としても活用できるのではないでしょうか。

 三重大学大学院工学科 准教授 浅野聡氏の講演では、実例を紹介しながら歴史資産を活かした地域再生をメインテーマとした内容を講演。経済成長に伴う町並み・集落などの歴史的環境の破壊が進む中で伝統的建造物群保存地区制度が創設され、地方都市を中心に導入件数が増加しました。歴史的な町並みを保全することで、文化財としての価値の保全はもちろん、観光資源として開花させることに成功した地域も多くあります。松阪や伊勢の事例の紹介をふまえて、行政だけでなくそこに住んでいる市民が、文化財として認識し愛着を持って守っていくこと、活用していくことが大切であると実感できる講演内容に、参加された方も熱心に聞き入っていました。

 パネルディスカッションでは、浅野氏をコーディネーターに建築家の市原正人氏、NPO法人まちづくり役場理事の伊藤光男氏、株式会社創建取締役副社長の川合史朗氏が実際に携わった実例をふまえ、魅力ある歴史まちづくりをテーマにディスカッション。
 市原氏の円頓寺商店街の実例、伊藤氏の長浜市の黒壁ストリートの実例から、エリアごとの課題とまちの主役が異なることが見えてきました。
 空き家空き店舗の活用のための組織「ナゴノダナバンク」の代表として、円頓寺商店街の復活の立役者となった市原氏は、地域ごとの魅力を活かした歴史まちづくりが大切であると言います。
 歴史的町並みはもちろんのこと、円頓寺商店街の魅力は「人」。老舗店の名物店主や料理、地元の祭りなど日常の営みの中に魅力が残っており、その魅力を活かすまちづくりを進めてきたそうです。建物や景観だけでなく、そこに住んできた人々にこそ価値を見出す発想が面白い事例であると感じました。
 長浜市で黒壁の歴史的建造物を活かしたまちづくりを進める伊藤氏からも、名古屋のような大都市では、まちを大きなエリアで捉えるよりも、自分が実際に生活するまちごとの魅力に気づき、活かすことが重要ではという声がありました。
 ランス市、トリノ市の歴史から見えてくる街の魅力はもちろん、エリアごとにあったまちづくりがあり、地元と行政が一体となって進めることが大切です。過去から受け継ぎ、地域固有の文化を守り伝えていくことが、エリアらしい魅力あるまちづくりにつながっていくのではないでしょうか。

★もっとポイント
●パネラーが感じる、名古屋の魅力

 魅力のないまちといわれる名古屋ですが、実際に他のエリアのまちづくりに携わってきたパネラーの方々から見ると名古屋というまちは、歴史を活用しながら小さなコミュニティごとに地域を活性化させている、実に魅力的なまちとのこと。名古屋市以外の市町村の方からイイねといわれるように発信していくことにより、市民の方の意識が変わり、誇りが生まれるのではといわれています。名古屋という巨大なコミュニティではなく、さらに細分化したコミュニティからの発信をすることで名古屋全体が元気になるのではないでしょうか。

「欧州姉妹都市ランス・トリノの歴史・まちづくりと名古屋
景観保存の方法と活用」をシェアする