COLUMN なごやめし

名古屋の喫茶店文化の背景に“茶の湯”あり!

2019.05.15

 名古屋の食文化を語る上で外せないのが喫茶店です。コーヒーを頼むと自動的にトーストやゆで玉子などがついてくるモーニング、ピーナッツなどがこれまた無料でつくおつまみといったおまけサービスは、他府県では見られない地域特有のもの。小倉トーストや鉄板スパゲティといった喫茶店発祥の名古屋グルメも楽しみのひとつです。

 名古屋市内には約4000軒の喫茶店があり、市民の年間の喫茶店支出額は約1万3000円と全国平均の2.5倍。お隣の岐阜市と常に全国トップの座を競い合っています。東京や大阪ではビジネスユースが中心ですが、名古屋ではシニアやママ友、ファミリーなど多様な層から多彩なシーンで利用され、すなわち喫茶店が市民の生活に浸透していることも大きな特徴です。
 名古屋にこんなに喫茶店が多く、また重宝されているのは次のような理由があるといわれます。出店ラッシュだった昭和40~50年代、都市部にしては土地代が安く出店しやすかった。社内に応接室を設けずに近くの喫茶店で商談を済ます企業が多い。お値打ちさ優先の気質がモーニングサービスを生み、よりお得な店へ足を運ぶ…。

 こうした理由も確かにあるのでしょうが、実は江戸時代から連綿と育まれてきた茶の湯の文化が背景にある、との見方もあります。
 尾張藩政期、この地では武家、商家ともに茶道に熱心でした。加えて自然環境に恵まれて農業の生産性が高かったおかげで庶民の暮らしにもゆとりがあり、お茶で一服する習慣が根づいていました。そんな生活環境や精神性が、近代になっても“一服の場”として喫茶店を求めることとなったのです。また、茶の湯のおもてなし精神は店主に引き継がれ、お客に満足してもらいたいという思いが、モーニングなどのおまけサービスにつながったとも考えられます。
 こんな風に考えると、名古屋の喫茶店は、伝統や風土に根差したれっきとした地域の文化ということができるのではないでしょうか。それを理解していれば、コーヒーの味わいもモーニングのありがたみも、さらにアップするはずです。

★もっとポイント
●名古屋喫茶で深煎りコーヒーが好まれる理由

 名古屋の喫茶店では、コクや苦味重視の深煎りのコーヒーが主流。古い喫茶店ほどこの傾向は顕著になります。
 これにはちゃんと理由があります。もともと喫茶店利用が最も多いのはランチ後のビジネスマンです。喫茶店でコーヒーをすするのは、味噌カツや味噌煮込みうどんなど味の濃い名古屋めしでお腹を満たした後。となると、すっきりした淡麗のコーヒーでは、口直しとして物足りません。濃い口の名古屋の料理に負けないよう、喫茶店のコーヒーもまたガツンと飲みごたえがある深煎りになったと考えられます。
 またおつまみとしてピーナッツが添えられるようになったのも、ピーナッツの塩気が名古屋の苦味の強いコーヒーと相性がよかったからといわれます。
 名古屋人の嗜好にマッチして地域色を育んできた喫茶店のコーヒーもまた、一種の名古屋めしといえるのではないでしょうか。

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