COLUMN ポップカルチャー

尾張名古屋の偉人「星野勘左衛門(ほしのかんざえもん)」が主人公!
江戸のオリンピックで天下一に挑んだ青春ストーリー「天を射る」

2019.04.12

 江戸時代に大流行した通し矢。京都「三十三間堂」本堂西軒下、全長約120mを端から端まで、一昼夜で矢を何本通せるか競い合う競技で「堂射(どうしゃ)」とも呼ばれています。通し矢は藩と藩との面子をかけた江戸のオリンピック。出場する弓術家は他藩に記録を敗られれば「切腹」を覚悟せねばならなかったのだそう。120mもの距離から、庇にも床にも矢を当てずに射通すのはまさに至難の業です。

 テレビドラマ「SPEC」の大ヒット脚本家西荻弓絵が原作を描く、「通し矢」で天下一を目指した若者たちの青春の物語「天を射る」。月刊!スピリッツ(小学館)でラグビーマンガ「ブルタックル」を発表していた飛松良輔が作画を担当しタッグを組んでいます。主人公の「勘左(かんざ)」こと星野勘左衛門は名古屋出身、尾張藩の下級武士の三男坊。「通し矢」で実際に天下一を記録したことのある知る人ぞ知る名古屋のヒーローをモデルにしています。

 勘左は、家計を助けるため、村の庄屋で日雇い百姓仕事をしており、武士とはかけ離れた生活をしています。当時、貧乏武士の三男坊は「一生厄介者」か「他家の養子になる」ことが一般的。しかし勘左は、親から勘当されながらも親友や師匠の教えと励ましを受けながら天下惣一(天下一の新記録達成)を目指して修行に励みます。
今回作品にかける意気込みなど、原作を担当している西荻弓絵さんにお話しを伺いました。

-「通し矢」は藩と藩の面子を懸けた“江戸のオリンピック”とありますが、この作品が生まれた経緯についてお教えいただけないでしょうか?

 趣味で弓道を始めてから、江戸時代の通し矢競技を知り、これはまさにオリンピックのようなものだと思いました。藩の威信(と大金)をかけて天下一の記録を競う挑戦者たちは、当時、人気歌舞伎役者にも匹敵するスターであり、京都だけでなく浅草にも三十三間堂があったことからも、庶民の熱狂ぶりが伺えます。日本の重要なスポーツ史なのに、あまり知られていないのも淋しいと思い、何とか東京オリンピックまでに物語にしたいと。

―なるほど。西荻さんご自身も弓道経験者なのですね。作画を担当されている飛松良輔さんも弓道経験者なのだとか。漫画家と原作者がともに経験者とは最強のタッグですね!
主人公の星野勘左衛門は尾張名古屋藩士に実際にいた人物ですが、西荻さんから見てどのような人物なのでしょうか?

 通し矢で二度も天下一の記録を打ち立て、三度目は後進に道を譲る為、あえて途中で止めて酒宴に繰り出したという豪快さ。晩年は、弓奉行、船奉行となる大出世を遂げた生涯に、痛快さを感じました。

-「まだやれるが,後につづく者の気をくじかぬために,八千本でやめました」は名言ですね!天下一を取ったあとに、さらに記録を更新するその力量が抜群であったことがうかがえます。

-原作者の立場から仕上がってきた飛松さんの漫画を見て、影響を受けることや感じることはありますか?

 時代ものの難しい背景の描写に感動しています。勢いのある矢飛びの描写には、原作者も頑張らねば、といつも励まされています。これから登場人物たちがより愛されて行くように頑張りたいと思います。

-力強いタッチや迫力ある絵柄は、この作品にぴったりです。躍動感のある表情や動きに魅入ってしまいます。
「天を射る」を描くことで、読者に伝えたいメッセージはありますか?

 どんなに厳しい状況にあっても、若い人たちには夢と志と勇気を持って、人生を送って欲しい。そんなメッセージが伝わればと思っています。

 西荻先生ありがとうございました。東京オリンピックの開催が日に日に迫るなか、「江戸のオリンピック」の今後の動向にも目が離せません!小学館ビッグコミックスピリッツ連載中の「天を射る」。コミックスの第1巻が4月26日(金)に発売予定!お楽しみに!

現在第1話を無料で公開中です。
http://spi.tameshiyo.me/TENWO01SPI

★もっとポイント
●「矢継ぎ早」という言葉は、通し矢で次々と矢を射ったことが由来?!

 「通し矢」のなかでも特に、射通した矢の数を競う「大矢数」は凄絶。午後六時からスタートして翌日の同時刻までの24時間、正座したままの態勢で数千本もの矢を射るのだそう。その様子から「矢継ぎ早」という言葉が生まれたといわれています。

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